専門外来のご案内 : 双極性障害

双極性障害とは

双極性障害とは 躁(気分が激しく高揚した状態)と 抑うつ(気分が著しく落ち込んだ状態) の両極端な状態を繰り返す病気です。(気分障害に分類されています)

双極性障害は、以前は「抑うつ病」とも呼ばれていましたが、うつ病は違う病気で治療法も異なります。

双極性障害の原因は複合的な要因によることが多く、うつ病と比べ身体的要因など内因の割合が大きいことが特徴です。

そして、双極性障害の多くはうつ状態から始まるために、練熟した専門医の問診をもってしても区別がつきにくいケースもあります。うつ病の治療をしてもなかなか治らない場合に、実は双極性障害だったということは少なくはありません。

※参考 :精神疾患の診断・統計のマニュアル DSM-5 :厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

双極性障害を発病する原因

双極性障害を発病する原因

双極性障害の原因は複合的な要因によることが多く、下記の複数の要素を含んだ問題であることがほとんどです。傾向として、うつ病よりも身体的要因など内因の割合が大きいことが特徴です。

そのため双極性障害は、うつ病よりも天候など自然の変化に影響されやすく、環境の変化に適応しようとする自律神経の働きが大きく関係しています。

双極性障害は、20代前後の人に発症しやすい

双極性障害は、20代前後の人に発症しやすい傾向があり、確実な遺伝性は確認されていませんが、病気になりやすい体質(ストレスに対する敏感さ・弱さなど)には遺伝的な側面もあると考えられています。また、一卵性双生児の場合では、50~80%の割合で二人とも双極性障害を発症する確率が高いです。

双極性障害の種類

双極性障害では、躁とうつの間に正常な精神状態があり、また、躁状態では、激しく気分の上向いている状態を「躁状態」(双極性障害Ⅰ型)、気分の上向きが軽度である場合を「軽躁状態」(双極性障害Ⅱ型)と呼んでいます。

また、 Ⅰ型、Ⅱ型の区別は 「躁状態の重症度」 「深刻さ」 「激しさの違い」 にあります。

双極Ⅰ型障害

躁状態とうつ状態がほぼ同じ配分で交互に訪れる。しばし激しい躁状態が現れる。

  • 「躁状態」がはっきりしていて症状が重い
  • 上向きの躁状態が、二型と比較して大きく現れる

双極Ⅱ型障害

うつが優位で「うつ」が持続し、時折軽躁状態となる。「うつ病」と誤診されやすい。

  • 「軽躁状態」とうつ状態を頻繁に繰り返す
  • 「軽躁状態」は入院するほど重篤ではなく、幻聴や妄想もなく、社会生活に大きな支障を来さない

気分循環障害

軽い躁状態と軽いうつ状態が交互に現れ、このような気分の不安定さが2年以上、慢性的に継続している。Ⅱ型よりもさらに軽い症状。

双極性障害の症状

躁状態の特徴

  • 睡眠時間が2時間以上少なくても平気になる
  • 寝なくても元気で活動を続けられる
  • 人の意見に耳を貸さない
  • 話し続ける
  • 次々にアイデアが出てくるが最後までできない
  • 根拠のない自信に満ちあふれる
  • 買い物やギャンブルにお金を使いすぎる
  • 初対面の人にやたらと声をかける


うつ状態の特徴

  • 食欲がない
  • 眠れない、過度に寝てしまう
  • 体がだるい、疲れやすい
  • 頭痛や肩こり
  • 動悸
  • 胃の不快感、便秘や下痢
  • めまい
  • 口が渇く

双極性障害は脳が小さくなる?

双極性障害は脳が小さくなる

双極性障害(躁うつ病)とうつ病の前頭葉体積の違いが明らかにーMRIにより診断の判別が可能となることに期待

脳のMRI研究結果では、前頭葉の一部である背外側前頭前皮質と前帯状皮質という2つの部位の体積が、うつ病患者さんに比べ双極性障害患者さんの方が小さいと判明しました。また、健常者と比べて右の前帯状皮質と左下前頭皮質という部分が小さいことも示されました。

この研究結果にある前帯状皮質は、感情のコントロールに関わる部分で、報酬予測、意思決定、共感や情動といった認知機能に関わり、血圧や心拍数の調節のような多くの自律的機能にも関わりがあります。

治療のポイントはドーパミンのコントロール

双極性障害の治療のポイントはドーパミンの分泌量をどうコントロールするかです。
これは、パーキンソン病の治療とリハビリに似ていますが、薬物療法では、躁状態の時にドーパミンの分泌を抑制させる目的に、抑うつ状態では、ドーパミンの分泌を増やす目的に治療します。

鍼灸治療の場合、これを他力ではなく自力でおこなえるように促します。

双極性障害は、脳のドーパミンの分泌量の異常によって引き起こされますが、自覚する症状は、自律神経の機能不全になります。

神経は「中枢神経」(脳と脊髄)と体中に張り巡らされている「末梢神経」に分けられます。

末梢神経は意思によって身体の各部を動かす「体性神経」と意思に関係なく刺激に反応して身体の機能を調整する「自律神経」に分けられます。

自律神経は、交感神経と副交感神経とに分けられますが、この2つの自律神経の働きのバランスが崩れると、全身的症状としてだるい、眠れない、疲れがとれないなど、器官的症状として頭痛、動機や息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢や便秘、冷えなど多岐にわたります。

精神的症状としては、情緒不安定、イライラや不安感、うつなどの症状が現れることもあります。

鍼灸治療では、自覚する様々な自律神経症状を改善しつつ、根本的なドーパミンの分泌量をコントロールすることもできます。

双極性障害に対する鍼灸治療の3本柱

双極性障害の鍼灸治療

当院の鍼灸治療では、患者さんの全体的な病状、その日の病状時期によって治療方針を組み立てます。
大きな治療方針の枠組としては、中医学による全身症状の改善、現代生理学による自律神経機能の改善、脳科学の検知から脳機能の改善をおこないます。

東洋医学の考え方として、本治と標治というものがあります。本治とは、病気の根本的な原因をなおすこと、そして標治は、自覚している症状を治すものです。一般的に西洋医学の治療は、標治を主におくことが多いです。
しかし、東洋医学の考え方ではどちらの治療も必要と考えており、特に双極性障害のような症状が変動する病気に対してはどちらも必要になってきます。当院の治療方針では、東洋医学的な治療法だけでは足りない部分を、現代生理学と脳科学的な治療法から補うことで、より安定して確実に症状を改善することができます。

  • 臓腑弁証・気血津液弁証
  • 西條式自律神経プログラム
  • 山元式新頭鍼療法(YNSA)


双極性障害の鍼灸治療

臓腑弁証・気血津液弁証

臓腑弁証・気血津液弁証とは、中医学の基礎となる診断方法です。特に慢性病に対しては、この2つの診断方法をあわせておこなうことが有効とされています。

気血津液弁証とは、人体を構成する陰液である血・津液・精と、陽気(気)の病理状態を判断するもので、五臓において気血津液などの正常なバランスが崩れた時に病気は起こると考えます。

臓腑弁証とは、診察で得た情報を分析、どの臓腑の変化が生じているのかを診断し、治療に結びつけるものです。

西條式自律神経プログラム

東京大学医学博士であり、筑波技術短期大学名誉教授、自然鍼灸学・自律神経臨床研究所 所長の西條一止先生は、自律神経機能からの鍼灸の科学化を構築したパイオニアです。

長年の研究科から、鍼が自律神経に影響を与え身体の治す力を引き出せる6つの治効メカニズムを発見ししました。このプログラムでは、姿勢と、呼吸、鍼治療の刺激方法によって自律神経機能をコントロールできることを科学的に証明し、臨床の現場で応用しています。

当院では、西條一止先生が学長を務めていた「東洋医学臨床技術大学校アカデミー」にも8年参加しており西條理論を忠実に再現しています。

山元式新頭鍼療法(YNSA)

山元式頭鍼療法は、医師である山元敏勝医師(医学博士)が治療法を確立しました。

山元式頭鍼療法は、脳出血、脳梗塞における半身不随、麻痺、言語障害、めまい、難病、パーキンソン症候群等に広く活用され、主にドイツ、アメリカ等欧米においては広く普及し、活用されています。今までの鍼治療とは全く異なり、即効性のある効果をあげています。

双極性障害に対する鍼灸治療の研究成果

双極性障害の慢性的なうつ症状に対し鍼治療が有効であった1症例 松浦 悠人ら

うつ病、双極性障害に対する鍼灸治療の効果に対しては、臨床的な研究データが増えてきています。研究一例では、治療対象として、うつ病、双極性障害の診断を受け、かつ二種類以上の薬剤により十分な治療で改善しなかった患者さんに対して、基本的な治療とその他身体症状に合わせた治療を週一回おこなうことで一定の改善が見られ、その効果は治療終了後二ヶ月は持続するとの報告でした。

この他にも、双極性障害に対する臨床研究の成果は全日本鍼灸学会をはじめ、さまざまな学会で報告されています。

また、NIH(米国 国立衛生研究所)の見解として鍼灸療法の各種の病気に対する効果とその科学的根拠、西洋医学の代替治療として効果について有効であると発表しました。

そして、WHO(世界保健機関)のレポート(2002)に「臨床試験によって鍼が有効とされた」と記載されている疾患・症状(鍼灸に非常に好意的なレポート)には、

Depression (including depressive neurosis and depression following stroke)
うつ病 抑うつ症(抑うつ神経症と脳卒中後の抑うつ症を含む)

と明記されました。

双極性障害は、一年を通して気分がアップダウンしやすい病気です。そのため、気分がすぐれない時はもちろんのこと、「今日は調子がいいな」と感じる時でも、良い調子が長持ちするように、下がらないように治療し、自立できるようにしていかなければなりません。

長年、薬物療法やTMS治療、認知行動療法などおこなったが良くならないとお悩みの患者さんは鍼灸治療をおすすめします。お気軽にご相談ください。

出版物:うつを鍼灸で治す

うつを鍼灸で治す

日本人の5人に1人は「うつ症状」を経験していると言われており、今はうつは日本人の国民病となっている。
一般にうつ病の治療には、抗うつ薬が使われるが、不適切な利用による副作用などによって悪化することもあるし、新型うつのように従来の抗うつ薬があまり効かないケースも出てきている。

そうしたうつ病に悩む多くの現代人にぜひ試してほしいのが、鍼灸によるうつ治療。鍼灸は肩こりや腰痛など身体の不調を治すものという印象が強いが、うつ病、気分障害、自律神経失調症、睡眠障害など、心の疾患にも効果がある。意外と知られていないが、鍼灸がうつの治療に効くことは、WHOでも認められていることなのだ。
また、薬のような強い副作用がないこともメリットと言える。・・・出版社より引用

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