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専門外来のご案内 : 男性不妊

目次

男性不妊の治療

男性の危機! 35歳を過ぎると精子が減少します

男性は、35~40才を過ぎると年齢と共に精子の数が減少します。また、1950年代からいわれていることですが、昔の同年代の男性と比べ、精子の数、運動率、奇形の数すべてにマイナスになるという統計が出ています。

例えば、2013年のフランスの調査報告では
15万人について1989年から17年間のデータを解析したところ、精子数が毎年1.9%減少していました。

上のグラフは、35歳男性の精子数の減少率を、1989年の精子数を0としてグラフに表したもので、1989年には1ミリリットル当たり7360万個の精子数が確認されましたが、2005年までに精子数は4940万個とほぼ3分の1にあたる32.2%減少していることが明らかになりました。

もともと日本人は、他国と比べ、精子の数が少ないとされています。そのことに追い打ちをかけるように日本では、さらに過度のストレス、長時間のデスクワーク等の影響で、精子減少、運動率の低下、精子の奇形数増加など男性不妊の症状でお悩みの男性が急増しています。

妊娠は奇跡ですが、偶然ではありません!

男性の「チカラ」が妊娠には絶対必要です

このページをご覧の方は、少なからず妊娠、精子に関するお悩みをお持ちの方ではないでしょうか。 率直にいいますと、精子数が少ない、精子の運動率が悪い、精子の奇形が多く見つかってしまったなど、いわゆる男性不妊の検査を受けたことがある方だと思います。

このページは、検査結果で、正常値に達しなかった方、正常値には至っているが、理想ではない方、どちらの方にも重要な情報、治療法をご紹介したいと思い作成したページです。

最近では、男性側の不妊治療も必要だという認識が広まりつつありますが、治療していない方、治療の成果が出ていない方、途中で断念した方、治療したくてもどうしていいのかわからないとお悩みの方が多く見受けられます。

当院では、このような男性を対象に男性不妊専門の外来を設けています。
この専門外来では、平成元年よりおこなっている不妊治療の経験から、一人一人の患者さんにあわせた治療方法を構築し、かつ患者さんの意向を治療方針に反映させています。

なぜ精子の数が減り、運動率が低下するの?

喫煙は最悪

喫煙によって精子の数は減少し、運動率が低下する傾向があります。
これは、タバコに含まれる有害化学物質が取り込まれることで、体内の活性酸素が増えることで精子が「酸化ストレス」を受けて傷ついてしまうのです。たばこを吸った数秒後には脈が弱くなるのがわかります。

飲酒はほどほどに

アルコールを摂取すると、二日酔いの原因で知られている、アルコールを分解される過程でできるアセトアルデヒドという非常に毒性の高い物質が精巣中で増加すると、精子を作る能力が低下します。
また、アルコールは生殖能力に不可欠な亜鉛の吸収も妨げるなど、精力の低下を招きます。

近代化の副作用、スマホのやりすぎにご用心!

スマートフォンやタブレット型の端末からはかなり強い電磁波が放出されており、これが「男性の精子の質を低下させている」という調査結果がイギリスのエクセター大学から発表されました。
他には、スマートフォンをズボンのポケットに入れておくと精子数が最大で30%少ないという研究結果も報告されています。
スマートフォンをズボンのポケットに入れておいたり、モモの上など股間に近い場所でパソコンを長時間操作するのは控えましょう。長時間座っているだけでも下半身の血流状態が低下し精子が影響を受けます。

それでも発毛を優先しますか?

発毛剤のプロペシア、一般名「フィナステリド」を例に挙げると、服用中の男性は平均精子数をみると乏精子症の人が多く、服用を中止すると、精子の数は平均で11.6倍に増加していたという調査結果もあります。また、この薬は、前立腺肥大、前立腺癌の治療薬として服用することもあるので覚えておいてほしい薬です。
プロペシアのように、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンへ変換する酵素を抑える働きのある薬は、精子数、運動率を改善させるためには注意が必要となります。

イソフラボンは逆効果!!

大豆に多く含まれるイソブラホンは女性ホルモンを活性化しますが、男性ホルモンの分泌を抑制する働きがあると言われています。これは、発毛剤や、筋肉増強剤等にも同じことが言えます。

おたふく大国 日本の危機

おたふくかぜは、世界各国でワクチンを2回定期接種されています。一方、日本では、任意接種1回、自己負担ということもあり、毎年60万人の子供が感染しています。おたふくかぜの怖いところは、成人になってから発病すると、精巣炎にかかり精巣が委縮してしまうと、精子の数が減ったり無精子症になることがあります。これは、ウイルス感染が原因ではなく、熱によるものなので、おたふくかぜだけではなく、インフルエンザなど高熱が続いた場合に注意が必要です。

健康な精子の基準は?

WHOが定める正常精液の基準

ここで、ご存知の方も多いと思いますが、健康な精子の状態の基準をご紹介します。
西洋医学では、様々な検査があり、その基準値を決めています。基準値を下回ったり、上回ったりすると病気とみなすのです。男性の精子の場合、精子の濃度、運動率、奇形率などから基準を下回ると乏精子症、精液中にまったく認められない場合に無精子症と診断をします。
また、無精子症はまったく精子が認められない無精子症(非閉塞性無精子症)と、精子の通り道である精巣輸出管、精巣上体管、精管、射精管が塞がっているため十分な精子が射精されない無精子症(閉塞性無精子症)の2つに分類されます。

乏精子症の原因には、精巣を取り囲む静脈がうっ血してコブのような腫れを作る精巣静脈瘤や、精子を作る機能がうまく働かず、十分な精子が作られない造精機能障害などがあります。また、いくら検査をしても原因が判明しないことも多々あります。鍼灸治療では、静脈瘤などの異常がないものに対し、特に適応、治療効果がのぞめます。

非閉塞性無精子症は無精子症の約80%を占め、視床下部、下垂体ホルモンの異常と、精巣(精子をつくる機能)異常の2種類が原因となります。

閉塞性の原因には、過去に尿路感染、精巣上体炎、性感染症、鼡径(そけい)ヘルニアの手術などの既往がある方に起こる場合があります。

精子の状態を理想に近づけるためには、非閉塞性の場合、顕微鏡下精巣内精子採取等をおこなう前に鍼灸治療をしておくほうがいいです。また、閉塞性の場合、閉塞の原因を手術等処置した後に機能回復させるために鍼灸治療をおこなったほうが好ましいです。

正常精液の基準

精液量1.5 ml 以上
精子濃度1 ml 中に 1500万個 以上
総精子数1 ml 中に 3900万個 以上
運動率32% 以上
正常形態率4% 以上

正常値との違い

正常総精子数3,900万個以上  運動率32%以上  正常精子4%以上
乏精子症総精子数3,900万個未満
精子無力症運動率 32% 未満
奇形精子症形態正常精子 4% 未満
無精子症射精液中に精子が無い

精子の数を増やし、運動率を上げ、奇形を減らすツボ

命門(めいもん)

命門は、第2、第3腰椎(腰の骨)の間、腰の一番くびれている高さにあります。

命門は、生命の根源、先天の気が宿る場所、命に力をつけると言われ、停滞しがちな気血の流れを整え、体力・気力共に増強させてくれます。

虚弱体質な人、体力が落ちている人、強いストレスが蓄積している人は、命門に刺激を与えることで、からだが活性化し精巣の機能が回復します。

腎兪(じんゆ)

腎兪は、命門から指2本分くらい外にあります。

「腎」とは精を蔵し、生命力の根源である元気をもたらすもの。
「精」とは、親から受け継いだ精と飲食物から作られる精に分けられます。
後者の精により常に補充されています。体が弱ってくると、この精を作れなくなったり、溜められなくなってしまいます。

腎兪を刺激することで、命門同様に精巣の正常な機能回復を助けてくれます。

関元(かんげん)

へそから指4本分下に位置する関元は泌尿生殖器系のトラブルに万能のツボです。そのため、精子の数が少ない、運動率が悪い、奇形が多いなど男性不妊に重要なツボとなり、EDに対しても効果があります。

本来、関元は体が元気になるために必要なエネルギーが集まるツボとされています。お灸で関元を温めることで、体力を蓄え、男性生殖機能を高めます。

最近では、寒い冬場だけでなく、デスクワークによる運動不足や、夏のクーラーによりお腹が冷えてしまい元気がなくなってしまいます。
普段から自宅でも関元にお灸をしてあげるとより効果が出やすくなります。

復溜(ふくりゅう)

復溜は、内くるぶしから指3本分上側で、スネの骨とアキレス腱の間にあります。

復溜は、腎虚(じんきょ):腎が弱っている時に助けてくれるツボで、もともとツボのつながりである経絡の腎経に属しています。

体がだるい、手足の冷え、腰痛、精力減退、耳鳴り、めまい、食欲不振等、体力が弱っていると感じている時に現れる症状がある時に効果のあるツボです。

上記のような症状があるときはこのツボを迷わず温めましょう。

鍼灸治療で男性不妊の原因である精子の質をあげましょう!

精子は、精巣の中にある精細管で「精祖細胞→精母細胞→精子細胞→精子」と細胞分裂していきます。精子へ成長すると、精巣上体に移動し、10~20日かけて成熟、泳ぐ力や卵子に侵入する力をつけます。
ここまでの過程を経過するまでに70~80日かかるとされています。つまり、元気な精子を射精するには80日前から準備が必要ということです。

補足として、射精後5~6時間で受精能力が完成し、4~5日生きるとされています。また、女性の子宮頸管→卵管へと進むまでに次々と脱落し、卵管までたどり着ける精子は正常な総精子数3900万個以上のうち数十~数百となっています。その中のたった1個が、卵子の中に入り込むことができれば受精となります。
精子の数が少ない・運動率が悪い、奇形が多いなどの状態は女性のホルモンバランスと同様、生活習慣や疲労など体の状態によっても大きく左右されることがおわかりでしょうか。

疲れがとれない、ストレスが溜まっている、腰が痛い、暴飲暴食、急激に体重が増えたなど思い当たる人は要注意!体が元気でなければ良い精子は生まれません。

鍼灸治療をすることで骨盤内、特に精巣を中心とした血液循環が良くなり、同時に自律神経のバランスが整うことで、精巣の働きが高まり、精子の数や運動率が改善されます。

鍼灸の治療効果は、早い人では1回目の治療後から体感できます。前述のように、確実に男性不妊を改善させるには、およそ3ヶ月治療を継続することです。治療の頻度、期間等は、初診時に体の状態をみてご説明いたします。病院での治療と併用して構いません。その方が確実に効果があがります。

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